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2026/11/07 19:49




猟師になると、獣の処分を頼まれるということ

先日、コンビニに軽トラを停めて休憩していた。

車には「有害鳥獣捕獲中」という大きなマグネットプレートを車体に貼っている。

すると、見知らぬ人が軽トラのドアを叩いた。

何かあったのかと思い、話を聞くと、コンビニの近所に住んでいる方だった。

近くの檻に狸が掛かっているという。




話を聞いているうちに、何を求められているのか薄々わかってきた。

おそらく、止め刺しをしてほしいということだ。

猟師になってから、こうしたことは珍しくない。

田畑に獣が入り、農作物を荒らす。
被害を防ぐために罠を設置する。
そして、獣が掛かる。

さて、どうしよう。

その先の対応を、猟師に頼まれることがある。


【獣が掛かった後のこと】

依頼される理由は様々だ。

自分の手で止め刺しをしたくない。

止め刺しはできるが、その後の処分場所がない。

そもそも獣に触りたくない。

感染症や寄生虫などが心配で、扱うことに抵抗がある。

それぞれに事情があるのだと思う。

農作物を守るために罠を設置した人が、捕獲された獣の処理まで一人で担えないこともある。

だから、猟師に連絡が来る。

たまに一頭頼まれる程度であれば、地域への協力として対応できることもある。

しかし、これが頻繁になると話は変わってくる。


【猟師にも都合がある】

猟師は、いつでも自由に動ける人間ではない。

現役世代であれば猟師という生業だけで飯を食っていくのも難しく、他の仕事とバランスを取りながらやっていく人がほとんどだ。

自分自身の捕獲活動もある。
仕事もある。
農作業もある。
家庭の時間もある。

捕獲した獣の解体や処理にも時間が掛かる。

そんな中で、突然「獣が掛かったから取りに来てほしい」と連絡が入る。

捕獲された獣は生きている。

そのため、対応を先延ばしにできない。

特に今はアニマルウェルフェアの観点から、なるべく苦しませず、早く終わらせるという事もある。

依頼する側にとっては、目の前の一頭の問題だろう。

しかし、依頼を受ける側にとっては、自分の予定を変更し、現場へ向かい、止め刺しを行い、その後の処理まで担うことになる。

一頭の対応であっても、時間と労力が必要になる。場所が遠くなれば尚更だ。

そして、獣が掛かる時期は季節的に集中しやすい。

複数の場所で捕獲が発生すれば、対応も重なる。

これは、猟師個人の都合だけで解決できる問題ではない。


【捕獲することと、その後の対応】

獣害対策では、捕獲することが重要視される。

農作物を守るために罠を設置し捕獲する。

しかし、捕獲した後には必ず対応が必要になる。

止め刺し。
個体の搬出。
処分。
場合によっては資源としての利用。

捕獲は、その一連の流れの中の一つの工程に過ぎない。

ところが、捕獲後の対応については、十分に考えられていない場合がある。

誰が止め刺しをするのか。

誰が搬出するのか。

誰が処分するのか。

その費用や労力は誰が負担するのか。

こうした問題が曖昧なまま、捕獲だけが行われる。

そして、対応できない獣が掛かった時、近くにいる猟師に連絡が来る。

結果として、捕獲後の対応が、特定の猟師の善意や都合に依存することになる。

【狩猟免許がなくても捕獲できる場合がある】

なお、狩猟免許を持っていなくても、一定の条件下では野生鳥獣の捕獲が認められる場合がある。

例えば、農林業者が自らの事業地内で農林業被害を防ぐために小型箱わなを使用する場合や、住宅等の敷地内で生活被害を防ぐために捕獲を行う場合など、免許が不要となる例外が設けられている。

ただし、免許が不要であっても、捕獲許可が必要となる場合がある。

また、対象となる動物や罠の種類、設置場所、捕獲目的などによって条件が異なるため、土地の所有者だからといって自由に捕獲できるわけではない。

捕獲することが認められる場合であっても、捕獲された動物の止め刺しや搬出、処分までを誰が担うのかという問題は残る。

捕獲という行為と、その後の対応。

この二つを一体として考える必要があるのではないだろうか。

【猟師は何を引き受けているのか】

私は、猟師が地域社会の中で担っている役割は、単に獣を捕獲することだけではないと思っている。

地域で発生した獣害に対し、捕獲された動物の最後まで対応する。

そこには技術だけでなく、時間的な拘束や心理的な負担も伴う。

命を終わらせること。
動物を扱うこと。
処分すること。

社会が必要としている仕事である一方で、生命を扱う職業である事から誹謗中傷はあるが、誰もが簡単に担える仕事ではない。

だからこそ、猟師に依頼が集まる。

しかし、地域社会が獣害対策を必要としているのであれば、その対応を猟師個人の善意だけに頼る仕組みでよいのだろうか。

地域の農作物を守るために捕獲する。

その捕獲後の対応も、地域全体で考える必要があるのではないだろうか。

【おわりに】

獣が罠に掛かることは、獣害対策の現場では日常的に起こる。

その一頭一頭に対応する猟師がいる。

しかし、猟師にも生活があり、仕事があり、時間がある。

地域に貢献することと、いつでも無制限に対応することは同じではない。

捕獲することを社会が求めるのであれば、捕獲後の対応についても社会として考える必要がある。

止め刺しをするということ。

それは、単に動物の命を終わらせる行為ではない。

獣害対策という社会の仕組みの中で、誰かが引き受けている仕事でもある。


追記
今回引き受けた狸は毛皮として鞣されます。


Bushcraft komorebiでは、野生動物の命を余すことなく活かす取り組みを行っています。

鹿革・毛皮・角などの製品に関するお問い合わせやご相談は、ショップのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。